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2009年10月25日 (日)

ペンを使う人。ペンを使わない人。

R8110050 ペンと言ってもこれは雑誌の名前でもカメラの名前でもない。本来の万年筆のことだ。周囲の編集長でペンを使う人と使わない人がいる。「趣味の文具箱」の清水編集長はカメラのムックでも知られているが、この人の作る万年筆の本はいい。もともと現代なら万年筆など不要である。筆記用具はボールポイントペンとマーカーと鉛筆で用が足りるし、手紙も原稿もPowerBookで書いている。そこで万年筆を「大流行」させるのには、この「時代遅れの筆記用具」が人生に必須という「錯覚」を持たせる必要がある。錯覚は錯覚であるが、それはそれぞれに万年筆の使い手には「真実の価値感」である。
人生には無駄な部分が必要だ。酒もそうだし、路地裏歩きも、習い事もそうであろう。ギャンブルも人生の無駄の部分であろうが、あたしの場合には「人生そのものがギャンブル状態」がこの半世紀継続しているので、ギャンブルはやる必要はなし。

万年筆は昔、実家が零細万年筆屋でスプリング万年筆という屋号であったことは前に書いたが、その家伝の万年筆は一本も残っていない。今使っているのは、もらいもののラミーともらいもののモンブランだ。後者は家人の父の遺品である。役人であったから真面目な文字を書いた人で、そのモンブランはやや細書きのようだ。それで自分などは太書きが好きなので、最初は使わなかった。数年して使ってみたらだんだんと手にあってきた。こちらの意思がペンに届いたのであろうか。モンブランの例の平たい格好のインキ瓶からインキを注入するのも楽しい。これはライカにフィルムを装填する楽しみと同類項であることに気がついた。万年筆を原稿書きに使うことは皆無だ。
本のプロットをたてる時、大きめの紙にアイデアを次々に書く時に、万年筆が役にたつ。これがボールポイントペンとかマーカーでは気分が出ない。

一方の万年筆を使わない方の「総統」が新潮の矢野編集長だ。矢野さんに連載中の「屋根裏プラハ」の原稿を直してもらうのをあたしは「矢野文章塾」と呼んでいる。ヒルズの49Fにてゲラを前に赤ボールポイントペンを持った矢野さんには近づきがたい威厳がある。この赤い筆記具であたしの劣文誤字脱字意味不明をばったばったと伐採してくれる。その感じはブラジルの開拓移民団というところだ。矢野編集長の持っている筆箱の中には各種の秘密兵器が入っているようだが、ご自身では、万年筆は持っていないと言っていた。考えてみれば当然な話で、われわれがインキの万年筆でなにやら手紙などしたためて居る時には、そこにつかの間の「文学的な叙情」を味わいたいのである。一方で矢野さんの場合には、本物の文学の戦場のまっただ中にいて、芥川賞作家を突撃させたりしている「司令官」である。ゆえに彼の「軍刀」は万年筆ではなく一本の赤ボールであることは納得が行く。

考えれば、カメラにも、万年筆とキーボードの分類が出来そうだ。万年筆組はフィルムを入れるクラシックライカであり、キーボード組はライカM9などがデジカメ軍団の総司令官になるわけだ。

★画像は回路のホテルの16Fのバルコニーから撮影。

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コメント

私は完全な万年筆党です。

清水編集長(『趣味文』)にやられました。w

「適度な不便が一番幸せ」という言葉が、今の私には一番“しっくり”きます。万年筆にインクを吸入し、フィルムを現像に出し、マッチで煙草に火を点ける。

張りつめた日常の中に、ささやかな “緩み” をもたらしてくれる瞬間。私にはこういった瞬間こそが、何よりも幸福な時間を与え、癒してくれます。

別にこれは“懐古趣味”ではありません。昭和50年代に生まれ、物心をついた頃には全てが自動化されていた時代。

私には、これら全てが“新鮮”に思えるのです。


バルナック型やM型ライカなんて、最高に良いですね~。

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