戒厳令発布!ただしヒルズライブラリの窓際のデスクのみ
本日0時に偽ライカ同盟共和国全土に「戒厳令」が発布された。ただし、ヒルズの49fのライブラリのあたしの仕事しているデスク上だけなので、レストオブざワールドには影響はない。
1981年だったか、すでに時代は正確には記憶していないが、秋にポーランドのクラコフの「連帯」を取材した。それから年を越してから、ある朝、朝日新聞の朝刊の「ポーランド全土に戒厳令」の文字を見たのである。
ようするにいきなり鎖国状態である。その年の春、戒厳令が解除になった最初のLOT(ポーランド航空)の便でワルシャワに入った。
これは一種のせこいテクニックであって、普通は戒厳令の解除直後にツーリストにヴィザなんてだしゃしない。
それはわかっているから、まずウイーンのポーランドの国営旅行社で、ワルシャワの最高級ホテルのバウチャーを買った。これは前払いであるから、ヴィザを発給しないわけには行かない。
ワルシャワ行きのLOTは外交官関係、報道関係で満員だった。ただし機内の前半分が人間の混載であって、後ろ半分は、あれは援助物資であろうか。薬品とかなにかで満載であった。
戒厳令下の夜のワルシャワ。
これにあこがれていたわけが、上の表記はうそである。
戒厳令解除直後のワルシャワが正しい。
午後8時30分から、外出禁止令はまだ生きているから、ホテルの部屋のばるこんから、ストリチナヤのグラス片手に無人の街路を見下ろした。その先の広場で戦車の移動するような音が聞こえるのも、格好の酒のさかなである。これを機会に自分は本場でウオッカの手を上げたのである。
ナトリウム燈の明かりがどこまでも街路を照明していた。その後のいきさつを手短に言うと、5日後にワルシャワ空港を出国しようとして、自分は「あげられ」たのである。
テーブルの上に広げられたカメラとフィルムを前に、あたしは「ツーリストだ!」と弁明した。
机の向こうに制服は「ばーか、ツーリストが5日で、50本もフィルムを撮影するか!」と言った。うまいことを言うなあ、、、と感心した。
結局、共同通信の知り合いに、そのフィルムを預けて、自分は出国ということになった。ウイーン行きのオーストリア航空のMD80は、すぐそこに待っているのだ。
大使館にも電話連絡した。
「なにも助けてくれないですよね」とあたしが聞くと、「残念ですが、お手伝いできません」と、電話の向こうの「慇懃無礼氏」は答えた。
今、思うと「犯行現場」で当事者に理解できない日本語での電話を当局が許可したのだから、あたしはたいした「魚」ではなかったのである。
それでもしゃくだから制服が向こうを向いている間に数本の撮影済みフィルムを見えないようにポケットにねじこんだ。その数本のフィルムで週間朝日か何かの仕事をしたのである。それで目出度く出国になった。
ゲートに向かう前に、その数本のフィルムが見つかるとまずいな、、、と、思っていたが、飛行機の出発時間が迫っていたので、それはなかった。これはセキュリテイチエックのマシンに電気代がかかりからスイッチを切っておく、というような、9.11のずっと以前の平和な夢の中のお話である。
オーストリア航空の機内に入ると、ウインナワルツがなっていた。緊張が一気にほぐれた。シュベヒアト空港に着いたら、アパルトマンには戻らすに、出所祝いにそのまままっすぐに行き着けのワイン酒場(1683年からあるやつ)に繰り込もうと決めた。
以上が1982年春の戒厳令解除直後のワルシャワ行きの話だ。
そして、四半世紀の時を隔て、今また、偽ライカ同盟共和国に戒厳令発布。
今度の「日本郵船氷川丸」の1000ページ写真集のための鎖国である。実は上の一枚の絵葉書が今度の仕事のキーになっている。
横浜の日本郵船歴史博物館の収蔵物を撮影中に、これに出会ったのである。昨年の12月21日の午後4時過ぎだった。その絵はがきの時代はいつか不明だが、モノクロだから案外に戦後のものかも知れない。
それが真っ二つに破られている。
それをセロファンテープで補修してある。セロテープでの補修という事実は実用主義であるが、この場合は象徴主義だ。
自分は昔人間だから、象徴主義には弱い。
それで目下、戒厳令を発して、1000ページのレイアウトの片っ端から、それに文章を流し込んでいるわけである。
ポーランド国歌は「われらあるかぎり、ぽーらんどいまだほろびず、、、」であるそうだ。
氷川丸のセロテープの補修には、ポーランド国歌と共通項がありそうだ。
上のカットはいずれも、リコーキャプリオR7。今度の写真集のメーンカメラでもある。
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