初夢
3年前の誕生日に犬Yの友人からもらった「こじきセット」である。
マンハッタンのベッガーさんが、この紙カップでコーヒーを飲んだあと、そのコップに小銭をめぐんでもらう。
つまり、消費と生産のシステムがミニマムなのだ。右はその紙コップを陶器にしたもの。
左はその紙コップを皮の財布にしたもの。年来愛用しているが、コップの方は年度が変わったので、ヒルズの仕事場に持参した。やはり紙コップと陶器では味がことなる。しかし路上の紙コップ精神は忘れたくないというのがこの製品のポイントだ。
ニューヨーク経験がある人ならにやりとするのだが、このトラッドなデザインの紙コップは最近では数が少ない。犬Yの友人は無論、オリジナルの紙のコップも送ってくれたが、それは大事にコレクション。
日常の生活の記憶と、日常の行動の断片が夢であるわけだが、今年の初夢はなかなか見ごたえがあった。こういう面白いコンテンツを「ただ」で配信してくれるのだから、夢は実にありがたい。
スタートのシーンは夜更けの東京である。丸の内に居るのだけど、周囲の様子は今ではない。どうも戦前のようだ。目の前のビルジングはどうも郵船のビルである。(これは年末に見た古い絵葉書がそのソースである)
福田和也さんと一緒で、これから深夜12時発のつばめにて京都の先の方の鄙びた町に行くところだ。
その片田舎に到着する。街は深夜で寝静まっている。日本路地裏学会の探査のようだが、実は福田さんの大学のゼミの研究発表がその小都市のお寺の庫裡で開かれるのだ。
真っ暗な夜道、道幅は両手を開いた幅である。瓦葺きのしもた屋が両側に迫って、ところどころにある街灯は、つげ義治の世界の裸電球。
小路を曲がる角に二階建てのぼろぼろに朽ち果てた櫓がある。そこを行くと右手に明治時代の下宿のような、巨大木造建築が大きな入り口を見せて静まりかえっている。その入り口の上には大きな和風建築の破風がある。
(ここらは年末にヒルズのライブラリで見た幕末の横浜の写真帳のアメリカ公使館が影響している)
ここが旅館だけど、今晩の宿泊はセミナーが開催される、お寺の庫裡の方になります、と、脇を歩行する福田さんが言った。ただし福田さんの声と靴音がするだけで姿は見えない。
広大な寺に入る。こんな小さい街にこんな名刹があったかな、、、といぶかしんで境内に入る。何度も廊下をまがって、セミナーの開催される庫裡に入ったら、百畳敷きで裸電球だ。そのふすま絵は国宝級である。もう遅いので就寝の時間らしく、そこら中に雑魚寝のふとんが敷いてある。壁の上の方に模造紙に筆で部屋割りならぬ、ふとん割りが描かれている。
それを見て、自分のふとんを探そうとしたが、何しろ暗いから、田中と言う文字の発見は困難を極める。
(これはヒルズのクラブレストランの暗さからきているのだ)やっと田中と言う文字を発見したら、その下にnikonとある。
「それはおれの寝床だよ」と、へんにゆっくりした声が掛ったと思ったら、知り合いのニコンの田中さんであった。田中さんは桜台の暗室同盟にわたしの忘れたままになっていた、1960年代のスナップ写真のモノクロのネガを届けてくれたのだ。
ニコンの田中さんに手伝ってもらって、模造紙の寝床割りを見ていたら、本堂の庫裡から、ずーっと線引きがしてあって、其の曲がりくねった先に「田中(長)」の文字が見えた。さて、何処であろうと思ったが、其の位置がさっき、その前を通ってきた、巨大な真っ暗な下宿のような旅館の位置のようである。
福田さんから、「これから宴会が始まります」との声で、隣の部屋に行くと、セミナーの面々がずらりと並んでいる。福田さんはその上座にすわって「如何に自分の自費出版が1000部も売れたのか」というセミナーの開催にあたっての懇親会の乾杯の音頭とりのスピーチを開始した。
福田ゼミナールのメンバーと思われる女子学生が、自分のコップになみなみと日本酒をついでくれる。なにを考えたのか、自分はそれを「一気呑み」するのである。それで二杯目をついでもらった。良く見ると、グラスと思ったのはガラスではなく、紙コップでもなくそれは新書の本を丸くまるめて、底に紙を張ったものである。
今度の新潮新書の僕の新作です。読者にはまず買った新書をこのような、コップにしてそれでお酒を呑んでもらい、それから、其のコップを開いて本として讀んでもらいます。これはそのダミーです。福田さんが言う。
その新書のグラス(というよりも紙コップ)を持ったまま、自分は記憶を頼りにさっきの幅五尺の裏町をたどって、さきほどの記憶の巨大な穴蔵のような旅館への道をたどる。
角の二階建ての櫓の前をまがって、道の左側にその旅館が黒く見えている。京都の地方都市と思っていたのは、どうも戦前の雑司ヶ谷のようでもある。(これはこの間、この界隈を歩行した記憶がきいている)
旅館は寝静まっている。
仕方なくその前を通りすぎようとしたら、上の方で「たなかさん、、、」と呼ぶ低い声がする。
立ち止まったら、建物の上の部屋の明かりがつき、次いで廊下の明かりがつき、静かな階段をおりる足音がする。旅館の人が自分を案内してくれるらしい。
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先に入稿しているので、上の夢は3日前のもの(別に夢に証拠性はないからいつでも良いようなものだが)
今朝(2日の早朝)に見たのも面白かった。ライカとか偽ライカがどっかの工場の廃棄部品置き場のような場所(どうもウエッツラーのようだ)に沢山あって、それを拾っているのである。
その中に、これはライカフレックスSLなのであるが、やけに横に引き延ばしたようなデザイン。つまり、ライカ250とライカフレックスが混合されたようなの(ボデイはクローム)を探し出した。そのボデイの裏側になにかはめ込んである。
よく見るとそれは薄い電話の受話器(いわゆるダイヤル式時代の)なのである。それを外すと、ライカフレックスの本体をコイルコードで結ばれている。その受話器を取り出した後にライツ社のシールがはってある。
読むにドイツ語で「世界最初の写メール」とあった。
へえ、と夢の中で思った。
昨日は氷川丸の金谷船長とそのカンパニーで大宴会。そのまま早朝から船長のマストに旗をあげるのを撮影。ヒルズにもどろうと思ったが、面倒にて佃に戻る。
今朝は欧州の労働者と同様に朝9時にヒルズに出勤。レセプショニストさんに新年のあいさつをして、上のこじきカップにて、カプチーノを飲む。はなはだ可なり。
原稿執筆。
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